ドローイング、ジュエリー、
そして自分自身が呼応するとき
Noso
初回のコレクションのアイディアを練っていた時に、パブロ・ピカソやアンリ・マティスの作品が持つ有機的なラインや抽象的な表現がジュエリーを通して肌に自然と溶け込んでいくようなものを作りたいと考えていたんです。イメージを膨らませていくなかで、タトゥーのような、自分だけのシークレットメッセージという感覚にも近いのかな、と考えるようになりました。
Tana
私は、ジュエリーを“小さなお守り”のような存在だと思っています。古いものは祖母から受け継いだもの、最近のものだと息子のイニシャルを刻印したリングまで、そのどれもがかけがえのない特別なものなんです。
Noso
そういった考えを伺う中で、このコレクションでは“ドローイングそのものを身につける感覚”を大切にしたいと考えるようになりました。ドローイングの意味に共感できたり、自分ごととして感じてもらえるような。
Tana
ジュエリーへの想いは、私がドローイングするときの気持ちとも繋がっています。自分にとって大切なものに敬意を込めて描いているからこそ、ドローイングがジュエリーというかたちで表現されるのはとても自然で美しいことだと思います。
Noso
制作中、何度も打ち合わせやメールでやりとりしましたね。タナさんから送られてくるドローイングには、遊び心や自由な表現が詰まっていて、そうした表現がジュエリーを手に取ってくださるお客様の暮らしや人生にすっと馴染んでいくようなイメージができました。後に、タナさんがピカソやマティスから影響を受けていたことや、私と同じ水瓶座であることを知り、運命的な出会いを感じました。また、新たに登場した<Message>のシリーズでは、たくさんの素敵な“言葉”を提案してくれました。お気に入りが多くて選ぶのが本当に大変で...。

アイディアを開花させた
タナさんの“言葉”
Tana
“言葉”について考えるのはとても楽しかったです。ドローイングするとき、いつも無意識のうちに“線”や“形”で表現していますが、その裏側にある“言葉”や、モチーフが何を象徴しているのか、どんな感情や記憶と結びついているのか、深く考えるプロセスは、はじめてでした。
Noso
特に「Life is an adventure, come with me(人生は冒険、一緒に旅にでかけましょう)」「We flow like water(私たちは水のように変化していく)」というメッセージが強く印象に残りました。
Tana
このふたつのメッセージは、人生の先輩のような友人から、仕事やはじめての育児に悩んでいた時にかけてもらった言葉でした。「人生は流れる水のようなもの。すべてはあるべき場所に流れていくから、心配しなくて大丈夫」。この言葉を聞いた時、とても解放されるような気持ちになったんです。人生は冒険で、常にどこかへ向かう“旅の途中”と考えた時、自分を信じて流れに身を任せようと思えたんです。変化の先には、きっと心地よい着地点があるんだって。
Noso
実はその言葉をタナさんから聞いたときに、私自身も同じようなことを考えていたんです。直接会ったことはないのに「同じ気持ちでいるんだな」と感じられたことが特別に思えました。また、前回のコレクションは、「Love myself(ありのままの自分を愛すること)」がテーマでしたが、今回は自分の周りにいる家族や友人、大切なものへの愛がより重要なテーマとなっていると感じます。
時間や経験の蓄積が
導いてくれる答え
Tana
ふたつのコレクションは、きっと人生の異なるフェーズを表しているのではないかと、この制作を振り返って感じています。最初に自分自身と向き合い、自分を愛すること。つい後回しにしてしまうけれど、本当はとても大事なことですよね。その過程があって、次に自分の周りの人たちに気持ちを開いていける。どちらか片方だけではきっと成り立たないと思うんです。
Noso
その通りですね。今回のコレクションはもともと展開していたパーソナルオーダーコレクションの絵柄のリニューアルという形で制作がスタートしましたが、「Life is an adventure, come with me(人生は冒険、一緒に旅にでかけましょう)」「We flow like water(私たちは水のように変化していく)」というメッセージからインスピレーションを受けて、新たにカプセルコレクションも制作することにもなりました。
Tana
コインチャームのネックレスをはじめとするアンティーク調のデザインは、私が祖母から受け継いだジュエリーともどこか似ていて、懐かしい雰囲気があり、パーソナルオーダーコレクションとは異なる魅力がありますよね。
Noso
“言葉”を着想源にコレクションが生まれたのは、嬉しい発見でした。ドローイングの話に戻るのですが、前回と比べるとドローイングのタッチや雰囲気、そして選んでくださったモチーフにも変化が感じられました。
Tana
実は、出産を経て久しぶりにドローイングに向き合ったので、描くこと自体が新鮮で刺激的なプロセスだったんです。なんというか、自分の中にあった何かがまた動き出したような感覚がありました。息子を授かったことで、自分がもっと良い人間でありたいと強く思うようになりました。もっと良い友人でありたい、良い同僚でありたい、良い娘、良い姉でいたい。すべての面で、もっと良くなりたいと思えるようになったこと。こうした前向きな気持ちは創作の大きな原動力になっています。
Noso
「自分の周りにいる家族や友人、大切なものへの愛」という今回のコレクションの軸となるテーマが、おのずとタナさんの人生と重なり、今回のドローイングが生まれたのだと思います。
Tana
特に<My Precious>のポートレイトのシリーズは前回と大きな変化があったと感じています。今までポートレイトを描く際には、自分の周りの女性をモデルにすることが多かったのですが、今回、Nosoさんからの提案もあり、あえて性別については考えずに頭に思い浮かぶ素敵な人を描いてみました。男性の中にも女性的な面があり、それを受け入れている姿を見ると素晴らしいと感じますし、自分の息子にもそういう男性になって欲しいんです。それは、私が<My Precious>を描く際に探求したかったテーマでもあります。
Noso
仏教の言葉で「正見」という言葉がありますが、タナさんの考え方と似ていると感じました。極端に白か黒かではなくて、そのバランスを大事にするという考え方を<ete bijoux>のデザインでも取り入れているんです。
Tana
そう言ってもらえて嬉しいです。息子が生まれたことや、それによる生活や自分の感情の変化はコレクションをつくる過程で、ずっと感じていたことですし、きちんと言葉にできてよかったです。

人生に寄り添ってくれる、
お気に入りを見つけて
Noso
タナさんは、今回のコレクションで特に気に入っているドローイングはありますか?
Tana
私が特に気に入っているのは、寄り添うふたりが描かれたドローイングです。「Sisterhood(女性同士の絆)」を感じさせるもので、私にとってとても大切なテーマのひとつでした。今まで、本当にたくさんの女性たちに支えられてきました。たとえば、出産後の回復が大変だった時、ナイトナースの方が手伝ってくれていました。 私の妹や上司も常に支えてくれていました。このドローイングは、ナイトナースや私の妹、上司との関係性を表しています。 Nosoさんはどうですか?
Noso
特定の誰かではありませんが、身につける服やジュエリーがその人の個性と一体化して、すべてが輝いているような、自由に表現しているような人に惹かれます。特にこのコレクションや<ete bijoux>では、デザインに制限は設けず、柔軟に考えたいと思っています。お客様にも誰かのためではなくて、自分自身の人生やスタイルに合わせて、自分自身の物差しで選んでほしいという思いがあります。
Tana
素敵な考え方ですね。今回のコレクションは、過去・現在・未来、どのフェーズにあっても輝きを放つような、普遍的な美しさがあります。年齢や気分に合わせて自分らしく身につけられるのは、素晴らしいこと。今の自分を表すものを選んだとしても、将来また別のものを選んだとしても、それはずっと人生の記録として残るものになると思うんです。
Profile
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Tana Lattore,Artist
バルセロナを拠点に活動するアーティスト。
身近な友人をミューズとしたポートレイトや、日常に潜む美しさに目を向けた詩的なドローイングを制作している。
繊細さと大胆さが共存する作品は、彼女のおおらかな人柄を映し出している。 -
Noso,ete bijoux Designer
<ete bijoux>のデザイナー。初回より<ete bijoux × Tana Latorre Collection>を手がけ、
タナさんとの対話を重ねながら、ふたりが大切にするテーマや想いをデザインへと昇華させた。
コラボレーション第一弾を記念して行われた、
タナさんの過去のインタビューはこちらからご覧いただけます。


